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膝痛(ひざつう)治療で最も重要なのは原因の特定
膝痛とは膝関節の周辺が痛くなる状態を指しますが、原因は様々で、その原因に応じて取るべき対処法も異なります。したがって、治療の最初では、まずは原因を見極めるべく様々な角度からアプローチします。
まずは問診を実施
問診では痛みの特徴や、ケガの経験、今までに行ってきたスポーツの種類や頻度、普段の仕事内容。さらにはご家族に膝痛を訴える人がいるかなど、痛みだけでなく生活全般についても詳しくお話を伺います。
<膝痛の問診で確認する主な内容>
いつから痛むか | 1週間ほど前/1カ月ほど前/半年ほど前/ケガの直後 |
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どの部分が痛むか | 膝の外側/膝の内側/膝の皿の上/膝の皿の下 |
どのような時に痛むか | 朝起きたとき/夜寝ているとき/正座するとき/立ち上がるとき/歩いているとき/じっとしているとき/階段の昇り降りのとき など |
どんな痛みか | 少し痛む/激しく痛む/疼くように痛む など |
膝に違和感はあるか | 引っかかる感じがする/こわばる/膝を動かすと音がする など |
これまでのケガや病気の 有無 |
骨折/脱臼/靭帯損傷/半月板損傷/関節炎 など |
家族に関節の病気に なった人はいるか |
変形性膝関節症/関節リウマチ/痛風 など |
生活状況について | 職業/趣味/スポーツの経験/姿勢や座り方/住宅環境/同居者の有無 など |
問診のほか、視診や触診も実施
問診で得られた情報を確認するため、実際の膝の様子を見させていただいたり、触らせていただいたりして、関節の変形の有無、軟骨のすり減り具合を確認させていただきます。
<視診や触診で確認する内容>
視診 | O脚やX脚は見られるか? 膝の曲げ伸ばしはスムーズに行えるか? |
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触診 | 押すとどんな風に痛むか? 腫れや熱、曲がりぐあいはどんな感じか? |
血液検査や画像検査も活用
問診や視診、触診などでおおよそのあたりをつけた上で、レントゲンやMRIといった画像診断も並行して行い、診断の確度を強化していきます。関節リウマチ、痛風、化膿性関節炎などが疑われる場合は、血液検査や関節液の成分検査なども実施します。
膝痛(ひざつう)の主な原因疾患
慢性的な膝痛(ひざつう)の原因として代表的な疾患をご紹介します。
変形性膝関節症
大腿骨と脛骨の表面を覆っている軟骨組織がすり減っていくことで、痛みが生じる疾患です。進行性の疾患で、症状が進行すると膝が曲げ伸ばししにくくなり、痛みも強くなっていくため、生活に支障をきたすようになります。
主な原因は加齢による軟骨のすり減りで、特にほとんど運動をしない人は注意が必要です。他に、肥満や膝を過度に使うスポーツも原因として挙げられます。
半月板損傷
半月板は大腿骨と脛骨の間にある軟骨組織で、膝の内側と外側に存在します。膝に強い衝撃がかかることで半月板にヒビが入り、痛みが生じます。損傷した半月板の位置によって、痛みの出る場所は異なります。
サッカーなどの急な切り返し動作の多いスポーツや交通事故などのケガで、膝に強い力が加わることが原因となることが多いですが、60代以降の方の場合はちょっとした衝撃だけでも半月板が損傷しやすくなるので注意が必要です。
その他に考えられる疾患
膝の痛みの原因はさまざまです。加齢、スポーツなどによる膝の酷使が原因のものが主ですが、それ以外の原因で起こるものもあります。
スポーツなどによる膝の酷使が原因の疾患
靭帯損傷、鵞足炎、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)など
その他の原因による疾患
ベーカー嚢腫、関節リウマチなど
急に膝が痛くなる疾患
痛風、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)など
その他の疾患の症状などについては、下記コラムでご覧いただけます。
▶ 膝が痛い!よくある10の原因と解決法を医師が解説
症 状
「膝が痛い」と言っても、痛みの症状はさまざまです。痛みの症状によって考えられる原因も違ってきます。
膝の外側が痛い
膝の外側が痛む場合、原因は腸脛靭帯の炎症、外側半月板の損傷、外側側副靭帯の損傷などが考えられます。
膝の内側が痛い
膝軟骨のすり減り、鵞足の炎症、内側半月板の損傷、内側側副靭帯の損傷、内側滑ヒダの炎症などが考えられます。
膝の裏側が痛い
膝の裏の痛みの場合、靭帯や半月板などの損傷や炎症以外に、思わぬ病気が隠れている可能性もあるので注意が必要です。
膝の上が痛い
膝のお皿(膝蓋骨)や膝上の筋肉(大腿四頭筋)の炎症が考えられます。膝を酷使するスポーツでのオーバーユース(使い過ぎ)が原因であることが多いです。
治療法
膝の痛みを改善するための治療は、症状にあわせて選択することが大切です。ここでは膝の痛みに対して行う、主な治療法をご紹介します。
トレーニング・ストレッチ
筋力不足が原因で膝に負担がかかっている方に行う運動療法です。変形性膝関節症や半月板損傷、鵞足炎、腸脛靭帯炎、膝蓋腱炎の方におすすめの治療で、ご自宅でも簡単に行っていただけます。
▶ 【動画有り】変形性膝関節症に効く! 室内で簡単にできる筋力トレーニング
▶ 半月板損傷のリハビリ【自宅でできる13の方法】
ヒアルロン酸注射
膝軟骨が損傷する変形性膝関節症、半月板損傷などの方に行う治療法です。ヒアルロン酸を膝に注射することで膝関節の滑りが良くなり、膝の動きの改善、痛みの緩和が期待できます。効果の持続期間は1~2週間程度で、定期的に治療を行っていきます。
膝の手術
トレーニング・ストレッチやヒアルロン酸注射をしても痛みが緩和せず、生活に支障をきたしているような場合は、手術療法が検討されます。手術は主に関節鏡視下手術、脛骨骨切り術、人工関節置換術の3種類に分けられ、膝の状態によって手術方法を検討します。
再生医療
ヒアルロン酸の効果が感じられなくなってきた、でも手術はできれば避けたい。そんな方へお勧めしたいのが再生医療による治療です。ご自分の血液または脂肪から有効成分を抽出し、膝に注射することで炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待できます。日帰りでの治療が可能で、体にも低負担、自己組織を使うため副作用がほとんどないところが特徴です。
ひざ(膝)の痛みに関する
よくある質問
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膝の痛みは自分で治せますか?
筋トレやストレッチで症状を緩和させることは可能です。
「治す」ということを「完全に元どおりに治すこと」と定義するなら難しいです。たとえば変形性膝関節症の場合、一度すり減ってしまった軟骨を復活させることはできません。ただし、肥満を改善したり、膝を支える筋力を強化することで、重症度の進行を緩やかにすることは可能です。筋肉を強化する筋トレと、付けた筋肉を柔らかく保つためのストレッチを習慣化いただくことが大切です。
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膝が痛い時はどうすればいいですか?
まず安静にし、腫れて熱を持っている場合は冷やし、痛みが少し落ち着いたら温めてください。
膝に痛みを感じたら、まずは安静にしてください。全く動かしてはいけないというわけではなく、可能な範囲で日常生活動作は行っていただいて結構です。ただしスポーツは控えていただき、重い荷物を持ったり、長時間歩くことなども避けてください。
痛みとともに熱感や腫れが見られたら、患部を冷やしてください。1日に数回、3日程度行って痛みが改善したら、次は温めます。入浴の際、湯船の中でよく温めてから曲げ伸ばしをしてください。
上記のような対応をしても改善の兆しが見られなければ、整形外科に検討してください。 -
膝痛になったらやってはいけないことは?
無理に動かしたり、運動を続けるのはやめてください。
まず、膝に痛みを感じる動作や運動は一旦やめましょう。
仮に変形性膝関節症のように、痛みの原因が関節内の炎症であった場合、無理をして動かすことで炎症がひどくなり、症状が悪化してしまうことがあるので特に注意が必要です。
何もしていなくても膝が痛むようなら、速やかに医師に相談した上で、何らかの治療を検討してください。運動療法は治療によって痛みが緩和してきたら開始します。その際、少しずつ無理のない範囲で行うようにしてください。 -
膝が痛いのは何が原因ですか?
運動(スポーツ)に伴う損傷や、関節組織の経年的な変化、内科的な疾患の影響などが原因です。
まず考えられるのは、運動やスポーツによって、骨、靭帯、軟骨、腱などが損傷を受けた場合です。ダメージを受けたその時点から痛みます。外から物理的に強い負荷が加わることや、継続的に酷使したことが原因となって痛みを生じます。
最も一般的なのは年齢とともに徐々に痛みが強くなってくるケースで、変形性膝関節症がその代表的な疾患です。膝の経年劣化のようなものなので、過去に膝を酷使した経験がある人の方が早期に発症する傾向にあります。
この他、内科的な影響で膝が痛むこともあります。例えば関節リウマチは、自己免疫機能の過剰反応によって手足の関節を攻撃することで生じます。また、痛風もその一つです。痛風は、体内の尿酸が過剰になり、関節にたまって結晶化した結果、炎症を引き起こして激しい痛みを生じる疾患です。足の指に生じることが多いですが、膝に症状が出ることもあります。
監修医師
蓬田 翔太 医師(東京ひざ関節症クリニック銀座院 院長)
経歴
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- 2012年
- 福島県立医科大学 医学部 卒業
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- 2012年
- 脳神経疾患研究所附属 総合南東北病院
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- 2014年
- 福島県立医科大学 整形外科
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- 2015年
- 飯塚病院附属有隣病院 整形外科
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- 2015年
- 福島県立医科大学 大学院 医学研究科 修了
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- 2016年
- 松村総合病院 整形外科
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- 2017年
- 脳神経疾患研究所附属 南東北福島病院 整形外科
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- 2018年
- 脳神経疾患研究所附属 総合南東北病院
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- 2019年
- JA福島厚生連 坂下厚生総合病院 整形外科
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- 2020年
- 総合南東北病院 整形外科
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- 2023年
- 東京ひざ関節症クリニック 銀座院 院長
資格・免許
- 日本整形外科学会認定 専門医
- 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
- 日本体育協会公認 スポーツドクター
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